疾病別患者指導講座・3
遊走腎の患者指導
内田 敬子
1
1慶応大学病院
pp.51-54
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911548
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近年数多くの抗生物質をはじめとして各種薬物の発見,量的生産や,その影響は必ずしも肯定できませんがジャーナリズムなどによる衛生思想の普及に伴なつて,泌尿器科を訪れる患者の訴えにもかなりの変化が認められ,単にその患部のみの観察,治療,看護では患者の苦悩を根本的に取除くことの不可能なものが増加のきざしを見せ,精神身体医学的な面からも,深く取組んで行かなければと考えさせられる例に遭遇いたします。大袈裟ないい方をすれば,“社会のあり方に疾病の源がある”などといえることになるのでしようが,文明の発達によるめまぐるしい変動や,人口の大都市集中化といつた殆んど避けがたいストレスの渦中にあつてはますます著しくなると考えられます。このような傾向にあつての私達看護婦の言動は非常に大きな意味を有することになると思うのです。いいかえますと,患者のよき理解者という立場に立つて,医師をはじめとして,その患者を取りまく全ての人々との綿密な連絡の上で行なわれる生活指導は患者の苦悩を少なからず和らげることができると思うのです。
このような見地から文明病の系列に頭角を現わしつつある遊走腎について少し記してみました。とは言え御承知のように,この疾患は新らしく発見されたものでもなく,ごく古くから語られ,どちらかといえばありふれたものなのですが,精神的な問題をもつ場合が多いので注目されてよい疾患だと思います。
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