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編集後記
藤岡 知昭
pp.352
発行日 2012年4月20日
Published Date 2012/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102796
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「2012ライフサイエンス知財フォーラム」において,東京大学医科学研究所の中村祐輔教授が「2011年度,日本の医薬品輸入額は1兆3600億円の輸入超過となった。国全体の貿易赤字は2兆5000億円程度なので,医薬品輸入額が貿易収支に与える意義は大きい。国内企業の創薬力の強化が大きな課題である」と講演された記事を興味深く読みました。私どもの周りを見回しても,現在,腎癌の臨床において主役となってきている高額な分子標的薬は,4種すべてが輸入品です。また,なじみの抗癌剤もほとんどは海外の創薬です。熱心に臨床をやればやるほど貿易赤字の増加に貢献している,なんともやりきれない現実に背を向けることができません。
日本の誇る医療保険制度における受益者負担は現時点で5割程度であり,国の財政の悪化は医療の崩壊の重大原因となることは明確です。政府は臨床中核病院の整備を将来の医療を見据えた対策の基本に置いていますが,問題は違う方向にあると思います。現在わが国には創薬に結びつくシーズの絶対量が少ないということではないでしょうか。それにつけても,中村祐輔教授が内閣官房・医療イノベーション推進室長の退任を決意されたことは無念であったと思います。「政府に猛省を促す抗議の決断」ではないでしょうか。
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