特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法
Ⅱ.泌尿器科手術
D.開腹手術
■尿失禁の手術
【尿失禁の手術】
90.TVT手術を行った患者です。手術翌日,CTにて骨盤内に大きな血腫を認めました。ヘモグロビン濃度が3低下しましたが,現在は新たな出血はないようです。ただし,膀胱が偏位してしまい,排尿障害が出現してきました。どのように対処すればよいでしょうか。
加藤 久美子
1
,
鈴木 弘一
2
,
村瀬 達良
2
,
鈴木 省治
3
1名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科
2名古屋第一赤十字病院泌尿器科
3名古屋第一赤十字病院産婦人科
pp.276-278
発行日 2007年4月5日
Published Date 2007/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101167
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
TVT(tension-free vaginal tape)手術は,インテグラル理論に基づいて,前腟壁の小切開から恥骨上縁の左右の小切開に向けて,恥骨後式(retropubic)ルートでニードル付きのポリプロピレンメッシュのテープを通し,中部尿道をU字型に支持する術式である1,2)。日帰り手術も行われるほどの低侵襲性,安定した長期成績の両者を備え,現在日本で行われる腹圧性尿失禁の手術の大半は,TVT手術かその変法のTOT(transobturator tape:経閉鎖孔式テープ)手術3~5)となっている。
TVT手術の施行数は世界で70万例を超え,重篤な合併症は少ないが,血管損傷1例,腸管損傷6例の死亡例が報告されている(Johnson & Johnson)。恥骨後式にニードルをレチウス腔に通す盲目的(blind)操作が最大の難所といえよう。TVT手術による骨盤内血腫の頻度はフィンランド全国調査では1.9%6)で,本邦では3例の症例報告があるが7~9),未報告のもの,無症候の軽症例を含めればもっとあると思われる。大半は保存的に対処できるが,開腹,塞栓術を必要とした症例も一部報告されている6,8,9)。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.