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1 診療の概要
壊死性筋膜炎は当初種々の名称で報告されていたが1924年にMeleneyがまとめた報告を行い,全例に溶血性レンサ球菌を検出したためhemolytic streptococcal gangreneと名付けた1)。しかしWilsonが1952年に原因菌が多岐にわたることを報告し2),筋膜の壊死こそが炎症の場であるとして,necrotizing fasciitisの名称を提唱した急速に進行する皮膚軟部組織感染症である。解剖学的に筋肉を包む深筋膜と,皮下脂肪組織と深筋膜の間にある浅筋膜の壊死性病変を主体とし,急速に深在性筋膜上を水平方向に拡大し皮膚の壊死をきたしてくる。さまざまな部位に発症するが,特に会陰部に生じた壊死性筋膜炎をフルニエ壊疽(Fournier's gangrene)と呼んでいる。
患者背景には,糖尿病,アルコール常用者,免疫力低下状態,ステロイド薬内服,末梢血管疾患などに発症することが多いが,ごく健康的な人に生じた報告もある3)。感染の原因としては,虫さされ,打撲,擦過傷,過少,皮膚炎,血管造影,注射,褥瘡,開腹手術,肛門周囲膿瘍などが多いが,原因不明例も多い。起炎菌として,A群β-Streptococus,黄色ブドウ球菌,ビブリオ,プロテウス,クレブシェラ,緑膿菌,バクテロイデス,大腸菌とさまざまで混合感染の報告もあるが,すでに抗生物質が使用され菌が検出されないことや混合感染のため原因菌が同定されないこともある。多くの症例が報告されるにつれて,典型的な急速に進行する症例だけではなく,比較的ゆっくり進む全身症状の軽い症例が存在することが判明し,Jarrett4)は3つのタイプに分類した(表1)5)。予後は不良で,死亡率は30~70%である6)。発症後12時間以内の手術の死亡率が10%に対し,12時間以上経過したものは死亡率が50%と報告しており,迅速な対応が必要である7)。98例を集計した中西らは,基礎疾患に糖尿病を有する本疾患の死亡率は50%以上で,有さない症例の死亡率21.6%に比し有意に高いと報告しており8),糖尿病は重症化の危険因子であるともいえる。
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