Derm.'97
漢方治療への近道
荒浪 暁彦
1
1富士宮市立病院皮膚科
pp.182
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902204
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アトピー性皮膚炎治療は,我々皮膚科医にとって最大の関心事の一つである.主体はステロイド剤外用であるが,どうしても強いステロイド剤から抜け出せず,慢然と外用を続けてしまう症例がある.このような症例に,どのような治療をすれば良いかいつも悩んでいた.ある重症アトピー性皮膚炎に柴胡清肝湯が著効したことがきっかけで,私は漢方薬を使い始めた.簡単な教科書には,湿潤性皮疹には消固散,乾燥性皮疹には温清飲等々書かれており,その通り処方したがほとんど効かない.やはり漢方薬は役に立たないと,しばらくの間見切ってしまっていた.
そんな折,たまたま漢方の大家の診療を見学する機会を得た.先生は,どの患者も必ず腹部を触わる.いわゆる腹診である.漢方の専門書には,必ず1つの漢方薬に対応して腹証の解説がしてある.本に従い見よう見まねでやってみると確かに改善率が上がる.西洋医学者にとってこれら漢方独特の診察法は奇怪なものである.しかし,例えば漢方常用処方解説には,「漢方薬を学ぶ場合に初めから近代西洋医学の立場で批判しながら研究したのでは漢方薬を正しく理解することは難しい.白紙になって漢方に取り組むことが必要である.」と書いてある.その通りだと思う.私のような未熟者でも古典に従って漢方薬を処方すると,その効果に驚く.皮疹の性状のみで判断していても効果は上がらないと思う.私は最初,漢方薬を馬鹿にしていたが,今は西洋薬と双壁を成す治療手段であると考えるようになった.これからもっともっと東洋医学的処方法を学んでいきたい.それが漢方治療の近道だと確信する.
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