とびら
積み重ね以外近道はない
山内 孝彦
1
1新日鐵室蘭製鐵所病院
pp.781
発行日 1977年11月15日
Published Date 1977/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101573
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人体の細胞を侵さないで,結核菌にだけ選択的に作用する薬物というものはないし,今後ともそのようなものの作られる可能性など考えられない……,こんなことを書くと「オヤッ」と思うことだろう,イヤ待って下さい,これは昭和初期に湘南地方のサナトリウムの院長で結核の権威といわれた方の言葉である.その頃,肺結核で長期療養中であった私には印象的な言葉であったのでよく記憶に残っている.現在は抗結核薬の使用で,その当時死亡原因の第1位といわれ,亡国病とさえいわれた結核治療に偉効を奏するようになったことは周知の通りである.人体が対象である病気の征服には人智と病気のながいたたかいが必要である.
環境問題が喧しくなって,自動車排ガス浄化のために規制値が示された当時には,メーカーや学者の一部から技術的に不可能なことを強制するものだといわれたものである.その後数年ならずして排ガス53年度規制を達成し,燃料経済性のみならず操縦性能も一段と向上させることが出来て技術史に残る大成功と評価されている.このことは研究費さえ十分であればなんとかなる,病気を征服していくための長年月を要する仕事とは可成り異ったものの証左である.
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