- 有料閲覧
- 文献概要
患者は20歳女性,アトピー性皮膚炎.数年来全身にvery strongクラスのステロイド剤を外用していたが,自己判断で中止したところ増悪.初診時は全身潮紅し,汚ない痂皮,びらんに覆われ,全身リンパ節腫脹,肝機能障害(GOT・GPT 3桁)を伴っていた.ステロイド剤は断固拒否するため,入院させ抗生剤,抗アレルギー剤の投与と白色ワセリンの外用をしてみたが改善しない.本人が漢方薬を試してみたいと言うので,専門書を調べ,リンパ節腫脹を伴う皮膚炎ということで,柴胡清肝湯を飲ませたところ,驚いたことに皮疹が改善してきたばかりか,1週間で,ずっと続いていたリンパ節腫脹がほぼ消失し,肝酵素も正常値になってしまった.西洋薬は何も変更しておらず,その変貌ぶりからは,柴胡清肝湯が効いたとしか思えなかった.以後,漢方薬でこれほど劇的に著効を示した症例はない.まさにbiginer's Iuckであった.この経験が引き金となり,私は本格的に東洋医学を学び始めた.それまで私は,漢方薬はあやしいとか,たまに効くこともあるくらいにしか思っていなかったが,薬が効かないのは医師の処方が悪いわけで,古来より伝わる東洋医学独特の診療法を学び,薬の性質を正しく理解し,陰陽虚実を間違わなければ西洋医学に勝るとも劣らないものであることが解ってきた.実際処方が合えば,何をやっても治らなかった慢性蕁麻疹や帯状疱疹後神経痛が,数日の内服でケロリと治ったり,アトピー性皮膚炎などは明らかに内服後改善する例がある.何よりも患者さんが喜ぶ.私は,最初に漢方薬の著効例に出会えたこと,西洋医学と東洋医学が同時に学べ実践できる日本に生まれたこと,またわが静岡県熱海市には,皮膚科漢方の大家がいらっしゃることを感謝して止まない.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.