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World Congress of Dermatology(WCD)2023が7月3〜8日,シンガポールで開催されました.4年に一度,開催される皮膚科のオリンピックとも言われる国際学会で,1万人を超える皮膚科医が世界から集まります.これを運営している組織はInternational League of Dermatology Society(ILDS)で,WHOの関連機関としてWCD以外にも途上国支援などの国際活動を行っています.日本からは京都大学の椛島健治教授がアジア代表の理事として参画していましたが,次期は投票の結果,大阪大学の藤本学教授が選出されました.
208のシンポジウムを含む非常に多くのセッション,巨大な企業展示会場が用意されていました.“Controversies in Dermatology”では皮膚科のさまざまなトピックに関するディベートが行われていました.例えば非侵襲的な画像診断は表皮角化細胞由来の癌の診断において生検病理診断に取って代わることが可能かどうか,というようなお題です.可能だとする演者は有棘細胞癌に限って言えば最新の画像診断率は90%を優に超えており,非侵襲ということを考えればルーチン検査として生検に取って代わると主張.対して,反対意見は疾患の重大性を考えれば病理診断を欠かすことはできず,生検はルーチンとして揺るがないと主張していました.最新の診断技術を用いたエビデンスの高いデータを紹介するだけでなく,その位置づけを改めて考えさせられる素晴らしい企画だったと思いました.少し残念だったのはアジアでの開催にもかかわらず日本は国別参加者数ランキングの15位までにも入っていなかったことです.私もコロナ禍のため海外出張は4年ぶりでしたが,近くの植物園でチケット売り場に並んでいると,皮膚電顕研究学会(SCUR)の古くからの友人に声をかけられ,大変懐かしく近況報告をしあうことができ,国際学会のもう一つの楽しさを味わうことができました.
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