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昨年は皮膚科医にとって有用な新しい外用薬がいくつか登場しました.爪白癬の治療は抗真菌薬の内服が必要と教科書に書かれているとおり,外用薬による根治は難しいものでありました.しかし,ケラチンへの低親和性により爪の透過性が改善されたエフィナコナゾールが登場し,外用薬として初めて爪白癬に保険適用を取得しました.合併症の存在などにより内服加療が困難であった症例にこの上ない朗報です.疥癬はイベルメクチン内服以外,確実に根治を目指せる治療がありませんでした.欧米でファーストラインの治療薬であるペルメトリンは安定剤の成分としてホルムアルデヒドを含有することなどから日本での販売が困難でしたが,フェノトリン外用剤が臨床治験を経て保険適用となりました.脳血管障害のある高齢者や,肝・腎機能障害のある患者,小児,妊産婦に対しても使用を考慮できる有力な武器を得ました.
新規外用薬の登場はこれらの皮膚疾患の治療を容易にし,治療の対象を広げたことに疑いの余地はありません.しかし,爪の真菌鏡検もせずに外用治療を開始したり,高齢者のかゆみに対しとりあえず抗疥癬薬を外用してみようとしたり,使い勝手の良さのあまり「診断」があいまいなまま治療が開始されてしまうことが懸念されます.ひとたび治療が開始されてしまうと,特に感染症では後から診断を確定することが困難となります.「使ってみて効かなければこの診断ではないのだろう」という考えは医療資源の無駄遣いであり,医師の役割を放棄しているといわざるを得ません.皮膚科専門医であればこのようなことはないと信じておりますが,非皮膚科医も含めて診断確定の重要性を強調してゆく必要性を感じています.逆にわれわれ皮膚科医は襟を正してこれまで以上にきちんとした診断を下すことが求められます.疥癬を確実に診断できれば皮膚科専門医資格をあげても良いくらいだ,と恩師が言っていたことを思い出すこの頃です.
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