Derm.2021
患者との会話
高橋 勇人
1
1慶應義塾大学医学部皮膚科
pp.109
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206345
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検査結果に頼らず,目の前にある発疹を見て的確な臨床診断を付けることは皮膚科診療の醍醐味の1つだ.私が担当している,慶應義塾大学病院皮膚科のアレルギー・薬疹外来はこれと正反対で,受診する患者がタイムリーに発疹を持つことはほとんどない.原因のはっきりしないアナフィラキシーや蕁麻疹,原因が特定されていない薬疹や退院後の重症薬疹をマネージしている.多くは,近隣のクリニックからの紹介や院内発生例のコンサルテーションである.この外来を担当してわかることは,多岐にわたる原因はさておき,患者が困っているという事実である.結局,発疹といえば,時折スマホの写真を見せていただく程度だ.その代わり,外来で患者の話をじっくり聞く.皮膚科としては稀な診察光景だが,アレルギー診療では,問診は最も重要なステップであるため,患者さんとの会話はおろそかにはできない.検査せずに,原因や使用可能薬剤の特定が会話のみからでも可能である.例えば,種々の検査をしても,原因不明に蕁麻疹や腹痛が繰り返す患者であれば,ますます問診の重要性が高まる.調子が悪化する具体的な個々の状況を知ることができるだけでなく,その状況の中に必ずヒントがあるからだ.多くの医師が多忙な日常診療で忙殺される日々を送る中で,時間をとって問診ができる環境があること自体が幸運と思う.問題解決の糸口となる患者さんとの会話は,結果的に得られるかもしれない症状の軽快とは別に,患者の心の支えになる医療の一端だと信じる.
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