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悪性黒色腫に対する抗PD-1(programmed death 1)抗体療法では,一度得られた腫瘍縮小効果を維持し続ける症例がある一方で,当初得られた腫瘍縮小効果が治療継続にもかかわらず維持されず,数か月〜数年後に再発をきたす症例がある.腫瘍免疫におけるPD-1阻害に対する獲得耐性の機序を調べるために,筆者らは転移性悪性黒色腫に対して抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)療法を行った78例のうち,客観的腫瘍縮小を得た後に病勢進行した4例を対象とした後ろ向き解析を行った.ベースライン時と再発時に採取した生検検体より全エクソーム解析を行ったところ,再発時の耐性獲得腫瘍検体では腫瘍細胞の増殖とともに腫瘍を構成する突然変異クローンが検出された.4例中2例で,各々,インターフェロン受容体関連ヤヌスキナーゼ1,ヤヌスキナーゼ2をコードする遺伝子(JAK1, JAK2)の耐性関連機能喪失型変異が,野生型アレルの欠失と同時に生じていることが明らかとなった.別の1例では,抗原提示蛋白β2ミクログロブリンをコードする遺伝子(B2M)の短縮型変異が同定された.JAK1, JAK2の変異は,インターフェロンγに対する反応を喪失させ,癌細胞増殖抑制作用に対する非感受性が認められた.B2Mの変異では,主要組織適合複合体クラスⅠの表面発現の喪失がみられた.残りの1例においてはT細胞への獲得耐性に関連する遺伝子変異は同定されなかったが,他の3例と比してベースラインにおける腫瘍細胞のPD-L1発現が低かった.
本研究により,悪性黒色腫患者での抗PD-1抗体療法に対する耐性獲得の機序の1つに,インターフェロン受容体シグナル伝達と抗原提示が関与する経路の欠損が関連する可能性が示された.
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