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文献紹介 皮膚悪性黒色腫の遺伝学的分類
鳩貝 亜希
1
1慶應義塾大学
pp.148
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204665
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331人の患者に由来する333の原発あるいは転移性の皮膚悪性黒色腫のDNA,RNA,蛋白を解析し,最も多く変異していた遺伝子のパターンによって,BRAF変異,RAS変異,NF1変異,Triple-wild-typeの4つのサブタイプに分類した.最大のサブタイプはBRAF変異で52%を占めた.体細胞のコピー数多型,RNAシークエンスなどの統合的な解析から,hot-spot変異が検出されないTriple-WTサブタイプでは,KIT変異および複合的な遺伝子配列構造の転位により,悪性の表現型が導かれることが判明した.これらの遺伝子による分類では,サブクラスの違いによる予後の有意な差異は認めなかった.
次に転写因子のmRNAのレベルにより,悪性黒色腫をImmune,Keratin,MITF-Lowの3つのサブクラスに分類した.Immuneサブクラスは,免疫系のシグナル伝達などの蛋白発現が高く,他のサブクラスと比較して予後が良好であった.さらに悪性黒色腫に関連するリンパ球の密度と分布を示すlymphocyte score(LScore)を調べると,局所および遠隔転移したリンパ節では他の組織よりもLScoreが高く,また局所転移ではLScoreが高いほど予後が良好であった.LScoreの高い腫瘍はImmuneサブクラスに分類される傾向にあり,T cellマーカーであるLCK蛋白の発現が強かった.これらの解析により,LCK蛋白の発現とリンパ球浸潤の評価の組み合わせが,悪性黒色腫の予後に寄与する可能性があることが示された.
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