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近年,進行期の悪性黒色腫の治療において,BRAF阻害剤(BRAFi)やMEK阻害剤(MEKi)といった,MAPK経路構成分子を標的とした分子標的薬の有効性が国外にて示され,本邦でも治験が進められている.この論文では,16症例において,組織免疫学および分子組織学的に,BRAFi単剤療法(ベムラフェニブ)およびBRAFi/MEKi併用療法(ダブラフェニブ/トラメチニブ)の効果を考察している.検討は,治療開始前と治療開始後10日目および14日目に腫瘍を生検して行われた.考察結果の要約としては,黒色腫抗原発現を増加させる,腫瘍免疫に好ましい微小環境を形成し,他の免疫療法とのシナジー効果を期待できるということであった.具体的には,MART-1,gp100,TYRP-1,-2といった腫瘍抗原蛋白の発現亢進がmRNA発現,組織免疫染色で確認され,同様に組織免疫染色にて浸潤CD8+T細胞が増多していることが確認された.CD4+細胞の浸潤の増加は認めなかった.また,BRAFi単独療法が奏効した後に増悪した症例において,増悪時に認めた腫瘍抗原の発現および浸潤CD8+細胞の低下が,MEKiの追加投与後に再度上昇することが確認された.分子免疫学的には,腫瘍環境において,IL-6,IL-8といったメラノーマにおいて免疫抑制性と考えられているサイトカインの低下およびグランザイムやパーフォリンといった細胞傷害顆粒の増加を認め,腫瘍免疫に望ましい環境となっていることが考えられた.一方で,T細胞の疲労マーカーと考えられているTIM-3,PD-1,リガンドであるPD-L1も増加しており,著者は今後の治療の改善のポイントとなるのではないかと考えていた.このように,本論文では,BRAFiおよびMEKiの微小環境への影響を確認・考察し,今後,免疫療法や他薬剤との併用による治療効果増大の可能性を示している.
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