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東京オリンピック開催前年の2019年度に東京慈恵会医科大学新附属病院が完成する予定です.オリンピックに備えて,大学では10月に「医療におけるグローバリゼーション」という企画を組むことになりました.公衆衛生,輸入感染症の問題にもスポットを当てることにしました.グローバル化が進む現在,感染症患者は長距離を短時間でかつ頻繁に移動できるようになり,感染力の強い感染症は国内で発生するとすぐに拡大し,同時並行的に航空網を経由して世界中に拡散します.いわゆる感染症の世界的流行(パンデミック)になり,多くの命が失われ,自然環境に取り返しのつかないダメージを与えてしまう可能性が生じます.このような状況に立ち向かうには事前にさまざまな状況を想定しておくと,想定を基に時間を置かずに対策を実施することができます.ただし,実際に対策を実行するとなると,それに伴って多くの方の日常生活に影響を及ぼすことになるので,できるだけ少ない負担でより有効な対策を選択することがとても重要です.
この状況は教室運営にも起きうる事態です.皮膚科を志す女性医師が増えるとともに,妊娠・出産・子育てのために長期休暇に入る教室員が一度に集中してしまう場合があります.そうなってしまうと教室の診療・教育・研究体制だけでなく,関連病院への派遣などにも重大な支障が生じてきます.医局長が先を見据えて作成した勤務体系を毎回見直さなくてはいけなくなってしまいます.有効な対策を選択するための準備として,事前に多くの情報が得られれば,その状況をシミュレーションして対策を立てることができます.もちろん,それ以上に大切なのは女性医師のキャリアパスを考えて,教室員全員でバックアップ体制を構築することなのは言うまでもありません.
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