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医学生の生活全般の管理・相談の責任を任されて4年目に入る.一般にこの係り(学生部長)は基礎系の先生方が行ってきたので,臨床系の私に十分務まるものか不安であったが,学生を飲みにでも連れて行って,あわよくば将来,皮膚科に入るように画策する良い機会かもしれないと気軽に引き受けてしまった.ところが,結構大変なトラブルの処理が多く,ストレス解消にとアルコール量が増え,ついにγ-GTPが400IU/lを突破する事態に至っている.それにしても,ここ数年,学生相談の内容が多様化,複雑化,重度化してきているのは否めない.相談の第一は今までもそうであったと思うが,学生期のアイデンティティを中心とした心理的な不安定状態,精神症状で,試験やサークルイベントなどをきっかけに悪化し,精神神経科や心療内科での医療が必要となるメンタルヘルスの問題である.いずれにしても対人関係の葛藤やトラブルに関するものが増加傾向にあり,早めに解決しないと度重なる留年,休学の要因となり,ついには放校に至ることも少なくない.次に多くなっているのがハラスメント(アルコール,セクシャル,アカデミック)である.このハラスメントの早期解決システムの構築にも頭を悩ますところである.しかしながら,相談に来る自我が脆弱で傷つきやすい学生が増えてくるのを見るにつれ,どうも経済の急激な発展が子供の成長発達にあまり良い結果をもたらさなかったのではないかと経済発展の負の遺産が実感される.さらに,子供はお利口さんで良い子でなければ認めてあげないわれわれ(大人・親)にも重大な責任があるように思えて仕方ないのである.われわれが子供の否定的な行動や感情(泣き喚き,愚図るなど)に真摯に付き合っていくことが,その解決につながるのではないだろうか.
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