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文献紹介 WHIM症候群患者に生じたクロモスリプシスによる自然治癒
伊勢 美咲
1
1慶應義塾大学
pp.142
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204663
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クロモスリプシスとは染色体の大規模な欠失とその後のランダムな再構成のことであり,近年,癌細胞で起こることが示された驚くべき現象である.WHIM(warts, hypogammaglobulinemia, infections, myelokathexis)症候群はケモカインレセプターCXCR4の遺伝子変異による常染色体優性遺伝性の免疫不全症である.著者らはクロモスリプシスによりWIHM症候群が自然治癒した1例を報告し,その発生機序について検討した.
本人およびその娘2人がWIHM症候群と診断されている58歳女性患者(患者A)において,30代以降に症状の自然治癒が確認された.患者Aの頰粘膜細胞,培養繊維芽細胞,リンパ芽球,末梢単核球では遺伝子変異が確認されたのに対し,白血球では変異を認めなかったことから,患者Aは体細胞モザイクの状態と考えられた.患者Aの骨髄細胞の遺伝子解析を行ったところ,2番染色体が順序および方向がランダムな18個の断片により再構成されており,WIHM症候群の病原性変異を有したCXCR4および他の163の遺伝子が欠失していた.患者Aの血液を用いた血球の種類別のPCR結果より,骨髄球系細胞はクロモスリプシスが起こった細胞,リンパ球系細胞はクロモスリプシスが起こっていない細胞からなっていることがわかった.
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