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DRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)は全身症状を伴い重症な経過をたどる薬疹を包括する概念であり,本邦でのDIHS(drug-induced hypersensitivity syndrome)に相当する.原因薬剤開始後,3~8週で起こり,発熱,皮疹,著明な好酸球上昇,リンパ球活性化,多臓器障害を伴う.抗てんかん薬,高尿酸血症治療薬をはじめとした数々の薬剤が原因となる.本研究は台湾のDRESS患者を対象とした後ろ向き研究であり,その臨床的,組織学的特徴と予後を調査し,原因薬剤による差に着目した.1998~2008年にNational Taiwan University Hospitalに入院した患者のうち,特定の診断基準によってDRESSと診断された60例(男性26例,女性34例)を対象とした.原因薬剤はアロプリノール,フェニトイン,ダプソンの順に多かった.平均潜伏期間は20.7日で,皮疹として剥脱性皮膚炎のほか,紫斑や水疱がみられた.肝,腎,肺の合併症が多かった.血液検査でリンパ球の増多や減少,好酸球増多,血小板減少を認めた.組織検査では多形滲出性紅斑に一致する錯角化,空胞変性,リンパ球の表皮内浸潤,真皮内のリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認めた.治療としてはステロイドの全身投与が主体であった.死亡率は10%で敗血症性ショックが死因の大半を占めていた.汎血球減少が予後不良因子だった.アロプリノールが原因薬剤として最も多かったことの理由として,特定の遺伝子型との関連が疑われた.また,アロプリノールが原因の症例では,慢性腎不全の先行や腎合併症が多いなど,原因薬剤による特徴の差異も明らかとなった.本研究から,DRESSは多種類の薬剤に対する特定の反応を包括した概念であることが示唆され,その疾患概念の曖昧さの解消が今後の課題と考えられた.原因薬剤による特徴や重症度の差に着目することで,さらなる疾患概念の明瞭化が望まれる.
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