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昨年の春の第186回通常国会にて「臨床検査技師法等に関する法律」の一部改正案が通り,平成27(2015)年4月1日から臨床検査技師が直接患者からの検体採取が可能になった.このため臨床検査技師は日本臨床衛生検査技師会が行う2日間の指定講習会を受講しさえすれば,患者から直接検体を採取することができる.この講習会での皮膚科関連の講義は3時間であるが,この中には直接鏡検,細菌培養,ツァンクテストなどが含まれている.私は昨年の日本医真菌学会総会のときに,このことを臨床検査技師の先生から初めて聞かされた.日本医真菌学会は日本医学会の基礎医学分野に分類されているため,厚生労働省(厚労省)から日本医真菌学会への通知はなかったが,日本皮膚科学会(日皮会)にはすでに数年前に厚労省から意見を求められていた.しかしこの通知は,日皮会会員には何も伝えられていない.この時点で会員に知らされていれば,意見書などを提出することは可能で,少なくとも皮膚からの検体採取は検査技師には認められなかったのではないだろうか.
この法律改正により,皮膚科以外の先生が臨床検査技師に患者を送り,そこで直接鏡検をしてもらい,臨床検査技師のお墨付きがつけば,皮膚真菌症の治療が正式に可能になる.直接鏡検で重要なことは,①病変のどこから検体を採取すればよいか,②モザイク菌などを真菌と間違えないための直接鏡検所見の読み方である.皮膚科医でさえ,まともな直接鏡検ができるのに数年のトレーニングを要するのに,たった3時間の講義で事足りることはないのではないか.日皮会の重要な責務の1つは,皮膚疾患を誤診することなく正確な診断を下すことができ,かつ利益相反によらないEBMに基づいた適切な治療ができる専門医を養成することである.この責務は本当に果たされているのであろうか?
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