講座
SLE (Ⅰ)—I.はじめに/II.SLEでの帯状庖疹ウイルス感染
大橋 勝
1
Masaru OHASHI
1
1名去屋大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, Nagoya University School of Medicine
pp.940-947
発行日 1979年10月1日
Published Date 1979/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202132
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I.はじめに
全身性エリテマトーデス(SLE)は,多くの異なった臓器を浸す原因不明の慢性炎症性疾患である.この疾患の臨床所見は非常に多彩であり,皮膚病変のみならず,発熱,多関節痛と関節炎,多発性漿膜炎(主として胸膜炎と心包炎),貧血,白血球減少症,血小板減少症,腎症状,神経症状,心症状がみられる.
SLEは圧倒的に女子に多くみられ,男子の10倍以上1)である.特に思春期および成人期初期の女子に多くみられる.厚生省特定疾患疫学調査報告によればSLEの平均発症率は100万人当り37.1±14.62)である.この数字はニューヨーク市での白人女子の100万人当り25.7人,黒人女子75.4人3)のほぼ中間の数字をとっていてSLEの発症に人種的な有意差があることを示すと考えられる.また地域別の統計で,日本の都道府県別補正有病率では特に高い都道府県はみあたらない2).現在の日本でのSLEの推定患者数は7,000〜9,000人である2).しかしSLEの診断は難かしく,日本での疫学調査ではSLEの診断基準はアメリカリューマチ協会の診断基準(ARA)(表1)による調査であるので,SLEの診断の感度は84%4)であり,疫学調査では高い感度ではない.またLE細胞現象陽性のみがARAの基準に入っており,その他の重要な免疫学的検査:抗DNA抗体,抗核抗体,C'H50,表皮真皮境界部の免疫グロブリンと補体の沈着,microtubular-structures(MTS)等が入っていないので,多くの早期例,非典型例や特殊例での診断の特異性は低く82%である.したがって実際の発症率は以上の数字より高いものと推定される.
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