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1.皮膚の微小循環系の電顕所見
1950年代に入ると電子顕微鏡が組織の微細構造の研究に革命をもたらし,毛細血管構造についての新知見を提供した.これらの研究によると1〜3),毛細血管は1つまたは2〜3個の内被細胞により形成されている.人皮膚毛細血管では内被細胞の厚さは約400nmで,核のある部分で横断すると内腔に突出していて腔を狭めている.この内被細胞の基賀側には厚さが約30〜50nmの基底膜があり内被細胞と伴細胞を連続して取り巻いている.伴細胞は内被細胞および基底膜の外側にあり,その細胞突起は扁平となって血管の外周にのび,内被細胞を包むように存在する.がしかし内被細胞のように連続してはいない.以上のように内被細胞と基底膜と伴細胞の3つが毛細血管を構成する要素となっている.
毛細血管は物質交換の場であるので,それぞれの臓器によって電顕的な超微構造でもそれぞれ異なっている.ここではSLEで重要な臓器の血管構造について述べる.電顕的構造の臓器による主な変化は内被細胞にある.皮膚の毛細血管では隣り合った血管内被細胞同上はその端部では巾90Åのtight junctionでつながるのみで隣り合った細胞膜のすべてにわたっていないので,水や低分子物質は通過し得る.細胞膜同士の癒着が内被細胞の接着面すべてにわたってみられる場合,即ち全部がtight junctionで結ばれていてベルト状になっているのは中枢神経系の血管であり,血液成分の細胞通過は完全に阻止され,血液脳関門を作っている.また,腎糸球体の血管では内被細胞は連続して存在するが,細胞質内を貫く小孔のある構造をとっている.細胞質内を貫く小孔はfenestrationと呼ぼれている.このfenestrationは直経約70nmあり,これを通って70nm以下の物質は血管腔より外部へと輸送される,以上3つの臓器の毛細血管の形態を図示したのが図1である.
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