連載 皮膚病理の電顕・1【新連載】
皮膚結合織の病変(I)—一次性全身性アミロイド症(1)〜(3)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Wright State University School of Medicine
pp.88-93
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202012
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はじめに
「臨床皮膚科」編集委員よりの依頼により,本号より約2年間の予定で皮膚疾患の病因の理解と組織診断に役立つ電顕と組織化学の連載を始めることになりました.このシリーズは「皮膚科の臨床」に掲載した「電顕のみかた」と対をなすもので,今回は病的材料を主とする予定です.病変の理解には正常組織の理解が前提となるので,必要に応じて補足していく予定ですが,正常構造に関しては近く刊行予定の「電顕のみかた」が参考になると考えます註.
皮膚疾患の病因解明に光顕の果してきた役割を考えるならば,電顕の重要性は論をまたないが,その取付き難さの故に敬遠されてきた.電顕は多くの皮膚疾患において,診断に欠くことのできない有用なデータを提供するにもかかわらず,必ずしも十分に活用されていない.すべての学問に共通していえることであるが,ごく初歩的な事項を十分に理解し,その後,継続的な努力をすれば,その分野をマスターすることができる.滞米40年,50年になる1世で英語の全然できない人々の居る事実や,留学生で「アメリカへ行けばなんとかなる」と考えて来た人が2〜3年後にさっぱり上手にならなかった英語を歎きながら帰国する例は我々が日常観察しているところであって,基礎的学習の重要性を示唆している.勿論,人には得手,不得手があるが,皮膚科学が極めて視覚的な学問であり,電顕が形態学の一部であることを考えれば,電顕—組織学系の学問が皮膚科医向きであるといえる.事実,名のある多くの皮膚科学者が,同時に優れた組織学者である例を挙げることができる.
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