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一次性限局性アミロイド症(1)
図7 苔癬様アミロイド症(Lichen amyloidosus)は皮膚に原発し皮膚に止る疾患で,多くの症例では下肢の伸側が侵される.血液性疾患や内臓の侵襲を伴わない点で非常に興味ある疾患である.通常,激しい瘙痒を伴い掻破による血痂がみられる.慢性の経過をたどるに従い,皮膚は肥厚,浸潤を示し,苔癬状を呈するのが本図Aでみられる,最近,皮膚に原発し,皮膚に限局するアミロイド症の他の型として,斑状アミロイド症(ma—cular amyloidosis)が認識されるようになった1)1.斑状型は躯幹に斑状の色素沈着を起こし,軽度の瘙痒を伴う.色素沈着は一様でなく波紋状(rip—pling)をなす1).苔癬型と合併することがあり,互に移行することもあるので同症の異型と老えられる2).原因については慢性皮膚炎がその基礎にあるのか,原発性のものなのか議論の分れるところであるが,興味ある点は両型ともに白人に少なく,黄色人種に多いことであろう.東洋人,プエルトリコ人などに発症することが多い2).この事実はニューヨークなど雑多な人種が混合している社会で明瞭に観察されている.日本においても多数の症例があってもよいはずであるが,"慢性湿疹"または"リール黒皮症"などとして看過されている例があるかもしれない.
図Bは生検組織のパラフィン切片にPAS染色を行ったものである.アミロイドは赤く染まり,ヂアスターゼ消化によっても消失しないから中性ムコ多糖類を含むことが解る.PAS陽性のアミロイドは表皮稜(rete ridge)の間,すなわち真皮乳頭に局在し,それより深部には沈着していない.一次性全身性アミロイド症(図1参照)と異なり,血管周囲には同様の物質が見当らない.図Cは同様の組織を固定することなく凍結し,切片をPAS染色したものである.図Bと比較して染色が良好なことに気付く.この事実はアミロイドを染める凡ての特殊染色に当てはまる.すなわちクリスタルヴァイオレット(図D),コンゴレッド(図E)などの染色も,凍結切片を染色した場合により良好な結果が得られる.図D,Eはフォルマリン固定,パラフィン包埋後に作製した切片の染色なので,染色度が薄い.しかし図C,DでPASに染まった部位にアミロイドが染まっている.真皮上層の小血管が全く染まらない点もPAS染色と同様である.図Eの標本を偏光の下で観察すると橙色にみえたコンゴレッド陽性のアミロイドが緑色を呈して複屈折するのがわかる.表皮の張原線維束,表皮最表層のケラチン,および真皮の膠原線維は複屈折はするが緑色は呈しない(図F).
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