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あとがき
中川 秀己
pp.750
発行日 2014年8月1日
Published Date 2014/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412104117
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「誠実」という言葉,見ただけで堅苦しく感じられますね.誠実とは「他人の意のままに自己を育てることでもなく,また自分の意のままにならぬ他人を突き放してしまうことでもなく,何とかして他人と自分との間に通路をこしらえあげようと努力すること」ということらしい.簡単に言えば,「まこと,まごころ」であります.診療にこの心構えを持ってあたれば,患者さんとの良好な関係が構築でき,治療のアドヒアランスも上がることは間違いないとは思うのですが,実際には時間がない,心の余裕がない,患者さんのキャラクターについて行けないなどのさまざまな理由で,不「誠実」な診療を行ってしまっていることが少なからずあるのが現状です.
今,誰かと心がつながっていると実感できることは,とても幸せなことであり,かけがえのない宝なのだと思いますが,所詮,他人は自己とは異なる存在で,考えも違えば生きてきた環境も違います.そんな他者(特に患者さんと家内)と本当の意味でわかりあうことなど不可能に近いと思われてしまいます.しかしながら,ほぼ,毎日,家庭で家内から不「誠実」極まりないといわれている私にとって,せめて病院,大学では「誠実」でありたいと思っています.そこで,「わかり合うことの努力」を最小限にするために,診療にあたって,1つだけでいいから,今日,患者さんに診察を受けて良かったと思ってもらえるような診療を心掛けようと努力することにしています.「一日一善」です.これなら短い診療時間でも意外と可能で,長続きしますし,患者さんにも喜ばれることが多いと思います.
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