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また水虫患者が増える時期になってきたが,治療してもちっとも水虫が治らないと訴える患者がいる.そして一番問題なのは,誤診していた医師は,大学病院などの皮膚科にいる医師も含まれていることである.このことから皮膚科医にとって最も基礎的な手技となる直接鏡検が,日本皮膚科学会認定専門医主研修施設でも必ずしも適切に行われていないという実態が浮かび上がってくる.直接鏡検のやり方やどこから検体を採取すると真菌を発見しやすいかは,皮膚科に入局した際に,先輩から学ぶが,現在多くの大学病院では,皮膚真菌症の手ほどきができる医師が極端に少なくなっている.もし医局内に直接鏡検を教育,指導できる人がいなければ,その教室出身者はだれもまともな直接鏡検をできないことになり,ひいては適切な皮膚真菌症治療ができなくなる.実際には以下のようなことが起こっているのではないかと想像される.つまり真菌症を主訴に来院した患者がいれば,皮膚科医であれば直接鏡検をする.しかし検体を採取する部位を知らないと,真菌がいないところから検体を採取することもある.そして顕微鏡を覗いていると,真菌と紛らわしいものが,真菌に見えてくる.その結果,真菌陽性と患者に説明し,抗真菌薬を処方する.真菌症であれば,よくなるので,やはりあれは真菌要素だったと確信するようになるが,皮膚真菌症でなければ,よくならない.患者さんからクレームが来ると,「水虫はなかなか治らないから」などと説明して納得してもらう.しかし爪白癬の場合は状況が異なる.爪白癬と診断した以上,治療は経口抗真菌薬である.経口抗真菌薬は副作用や相互作用もあるし,薬価も高い.さらに治療効果は患者にもわかるため,治らない場合は患者からクレームが来る.それだったら,経口抗真菌薬の副作用が怖いと説明して,外用抗真菌薬でお茶を濁したほうがよいと考える皮膚科医も出てくる.このようなことを繰り返すうちに,真菌感染症患者を適当にあしらう術が身に付くようになる.研修医時代は直接鏡検所見の見方を人に聞くこともできるが,ある程度の年齢となると,今さら直接鏡検ができないとは言えないのが人情である.いずれにせよ皮膚科医が皮膚真菌症の診断ができなくなったら,皮膚科医としての存在意義を失ってしまう.なぜならば,確定診断もせずに水虫治療をするのであれば,薬局で薬をもらうのと同じであり,また非皮膚科医との差別化ができなくなる.日本皮膚科学会は早急にこの対策を講じなければならない.
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