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文献紹介 免疫グロブリン大量療法による新たなTH2経路を介した抗炎症作用について
土井 亜希子
1
1慶應義塾大学
pp.1078
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103496
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免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)は多くの自己免疫疾患の治療に使用されているが,その作用機序は明らかではなかった.シアリル修飾型のFc領域(sFc)を有するIgGが,SIGN-R1を発現する骨髄由来細胞に作用することで抗炎症作用がもたらされることは報告されてきたが,この論文で著者らはSIGN-R1のヒトオルソログであるDC-SIGNを発現させたトランスジェニックマウスを作成し,SIGN-R1欠損マウスと交配させ,SIGN-R1をDC-SIGNで置換したマウスを作成した.このマウスにK/BxN血清を移入させて,関節炎を発症させたところ,IVIGで病態は改善し,ヒトDC-SIGNがマウスSIGN-R1を機能的に補完できること,ヒトにおいてDC-SIGNがIVIGの効果の発現に必要であることが示された.FcγRIIB欠損マウスではIVIGが無効だったことから,FcγRIIBの重要性が明らかとなり,Th2サイトカインであるIL-4およびその受容体やSTAT6を欠損したマウスにおいて,IVIGで病勢の改善が認められなかったことから,IL-4シグナルも必須であることが示された.さらにIL-4icを介した抗炎症作用が,FcγRIIB欠損マウスで認められなかったことから,FcγRIIBが不可欠であることが確認された.
また,IL-33刺激を加えた好塩基球をマウスに移植することで,抗炎症作用がもたらされることから,IVIGが直接IL-4の上昇をもたらすのではなく,IL-33を介してIL-4の発現を誘導すること,好塩基球が重要な役割を果たしていることが考えられた.
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