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サブインターンシップ(Sub-internship)
専門科での4か月の実習の後,いよいよ入院患者を第一線で治療することになる.一般内科は4チームに分かれ,各チームは指導医1人,シニアレジデント1人,レジデント(1年目のレジデントなのでインターンともいう)2人,医学生やサブインターン2~3人で構成される.無論,サブインターンは一番下っ端である.チーム全体で当直するため各チーム4日に1度の当直が回ってきて,指導医以外は病院に泊まって全入院患者の世話をする.新患は当直チームの患者となり,多い時は,1晩に15人の新患が2人のレジデントに順次振り分けられる.その中で教育的な意義のある4~5症例は医学生やサブインターンの実習として私たちに任せられ,問診,診察,検査,診断,治療のすべてを受け持つ.日本のポリクリのような見学ではなく,医学生やサブインターンも実戦力として鍛えられる.手技も動脈血採血はおろか,胸水穿刺,腹水穿刺,脊髄液穿刺なども手取り足取り教えられて自分でできるようになる.また,ICU(内科集中治療室)の患者も能力に応じて任される.医学部というより医学職業訓練校のようであり,医学部卒業時には医師として実戦に出て行けるように訓練される.
病棟の1日は朝8時の指導医回診から始まる.入院患者に週末はないので,当然この回診は土日も含め毎日ある.自分の受け持ち患者の状態と人数から逆算して8時に間に合うように6時か7時に病院へ行き,各患者の容態を把握し当直医からの報告を確認し,自分なりのプランを立てる.回診では各患者の枕元で指導医に対してプレゼンテーション(報告)をするのであるが,外国人の私にはこれが大苦労であった.この報告では病歴,所見,検査,診断,治療計画に対してすべての情報を網羅しつつ一定の形式に沿って5分以内に,またICUの患者では頭の先から足の先までを系統立てて10分以内に言わないといけない.アメリカ人でも機関銃のように早口で息継ぎをしないでやっと時間内に言い終えるのであるから,これは英会話の不得意な私にとってはほとんど不可能な要求であった.特に数字は苦手であった.所見は必ず血圧,脈拍,呼吸数,体温と始まり,挿管している場合には人工呼吸器の設定や動脈血の所見を加え,血液検査は末梢血から始まり血液生化学,肝機能,特別検査と順次まくしたてないといけない.初めのうちは途中で何度も舌がもつれ,この数値読みだけで3,4分もかかる.シニアレジデントが呆れ顔で,実習をするよりも「ESL(English as a Second Language:外国人向けの英語指導クラス)で勉強してきたらどうか」と言う.長い話し合いの後で私の熱意に負けた彼は,模範症例集と検査数値の紙の山を私に渡して,「毎日お経のように声を出して読みまくること」と言い,またテープに模範の報告の仕方を録音してくれた.このお経読みを続けて1か月,ようやく皆に迷惑をかけないレベルにまで上達した.
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