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米国医師国家試験(USMLE)
アメリカで外国人医師が医師になるための最初のステップは,米国医師国家試験(United States Medical Licensing Examination:USMLE)を受けることである.以前はアメリカ人用と外国人用の別の国家試験があったが,最近はこのUSMLEに統一されている.この試験はStep1(基礎医学),Step2(臨床医学),Step3(臨床応用)から成り,研修の前にはStep1とStep2に合格していないといけない.Step3は州によるが,大抵は研修を1年済ませてから受けることになる.外国人の場合は,これらに加えてEnglish test(TOEFLのようなもの)と1998年からはClinical Skill Assessment(CSA,これは患者さんに扮した試験官相手の実地試験である.私は1996年に受けたのでこのCSA は必要なかった)とに合格するとECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates) certificateという証明書が発行され,臨床研修(インターン,レジデント)に申し込みができるようになる.これらの国家試験は,今はコンピュータ試験となり試験時間も短く年中いつでも受けられるようになったが,私が受けた1996年にはまだ従来通りの筆記試験で,年に2回しかなかった.アメリカで臨床医になろうと思ったのが1996年春,6月末までラボで実験し,8月にStep2を10月にStep1を受けることに決めた.これを逃すと1年待たないといけないからである.どちらも2日間にわたる試験で午前午後3時間ずつ約200問の問題(計12時間,約800問)を2日間で解き1つのステップが終了する.
日本の医学部卒業後13年経ち,その間皮膚科臨床と実験に専念していた状態で医学知識全般を勉強し直すのは並大抵ではなかった.しかも英語でである.試験問題集を買ってはみたものの乏しい知識で英語の問題を1問1分ではとても解けそうになかった.心筋梗塞も高血圧も糖尿病も自分で治療したことがないのだから,素人に毛が生えたくらいの知識しかない.大学の近くにアメリカの予備校のカプラン校があり,6月頃門をくぐってみた.「外国人医師がたくさん来て勉強してますよ.」と受付嬢は言う.説明を聞いた後,カウンセラーの女性が無料の診断模擬試験を受けてみたらと勧めた.「まあ,ものは試し」と受けてみると内科はおろか小児科も産婦人科も精神科も解剖も生化学も……全くわからない.そういえば昔勉強したなと懐かしい記憶が蘇るものの,解答に結びつく記憶は深く封印されたままである.5者択一なのでとりあえず何かを塗りつぶして次に行く.2~3時間の模擬試験の後渡された結果は,何と正解率30%.これでは鉛筆をころがすのと大差はないじゃないか.ちなみに合格のための最低正解率は60%くらいだそうである.カウンセラーがにっこり笑い,「今から勉強したら大丈夫ですよ.来年のいつ試験を受けますか」と言うので,「今年の8月にStep2,10月にStep1」と言うとさすがに目が点になっていた.とにかくこうしちゃいられないとカプラン校に入ったのと同時に,日本に飛んで昔の教科書を一式持って来た.まず日本語で理解してから英語で実践だ.
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