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皮膚科コンサルト(Dermatology Consult)
前回は皮膚科外来の様子を話したが,今回は皮膚科のもう一つの大きな仕事,皮膚科コンサルト(入院患者や救急患者さんの診察依頼)について述べようと思う.このコンサルトは皮膚科レジデントのポケベルに診察依頼が来ることから始まる.レジデントは電話で必要な情報を得た後で病棟や救急外来に診察に行き,カルテを作って診断治療計画を立て,皮膚科指導医とともに回診をする.1日平均1~2件の新患依頼が来るため,経過観察患者を併せると3~5名の患者を診て回ることになる.依頼は,血液内科,ICU(集中治療室),外科,小児科からが多い.移植患者さんの発疹などでは,炎症,感染,薬疹,再発癌,移植反応などあらゆる可能性を検討しないといけない.また,天疱瘡など皮膚病の入院患者さんは内科に入院してから皮膚科診察依頼が来る.それゆえ,私たち皮膚科医は入院チームの医師団の皮膚科相談係兼教育係として働く.入院チームの医師たちに皮疹の診かたや病気の説明などをした後,文献などを渡すととても喜ばれる.
大学病院やこども病院ではこのような重症患者の発疹の依頼が多いが,公立のハーバービュー病院ではさまざまな患者の依頼がある.中国から貨物船に乗って密入国した集団が捕まった時もカナダのバンクーバーから重症患者がここに運び込まれた.全員脱水と栄養失調が激しく,急性腎炎になっていたり,ストレスからヘルペスが出て全身に多型紅斑が出たりして皮膚科に依頼が来た.HIV(エイズ)やホームレスの人も多い.ホームレスの人の入院部屋へ行くと,いつもの慣習からかシーツを頭からかぶって蓑虫のように丸まって寝ていることが多いのですぐにわかる.彼らが痒みを訴える場合には,手袋をしてそっとシーツをめくり,皮疹の形と分布を確認した後,ベッドの下のゴミ袋に入った衣類を取り出す.ミシンの縫い目の辺りをひっくり返すとお目当てのものが見つかることが多い.むろんシラミである.この後は,いつも大変である.看護婦さんなど周りの人は皆自分の服をチェックして,急に体中を掻き始める.ホームレスの人の服と病院のシーツは捨てられ,彼らは退院する時には新しい服と新しいシーツを与えられる.しかし,ホームレスとは言ってもやはり自分のお気に入りの寝床があるらしく,そこに戻ってしまうためにすべてが元の木阿弥になることも多い.
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