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症例検討会(Case Presentation)
レジデント教育のメインイベントは,毎週水曜日の8時から始まる症例検討会とグランドラウンド(大講義)である.症例検討会では難しい症例を直接診て討議するのに対し,グランドラウンドでは難しい症例をもとに講義形式でスライドを使って討論する.後者は学会の総説発表をもう少し活発にしたもので日本人でも容易に想像がつくが,前者のようなものは日本には少ない.入院患者さんを前にした教授回診とも全く違う.ここでは,診断や治療の困難な症例や珍しい症例の患者さんに検討会に来てもらい,医師がおのおの直接診断してから討議室にて討論する.患者さんによっては遠方から何時間もかけて来ることもある.奉仕料やお手当てなどもない代わりに,大学病院の教授を含む多数の医師にただで診てもらうことになる.レジデントにとってはこれは教育の場であるとともに,教室員全員の前での毎週の実地試験のようなものでもある.
症例検討会の形式は各大学のプログラムによって多少異なる.形態診断学を中心にしたり,問診も含めた総合診断学に重点を置いたりするが,いずれの場合も,目的は患者さんのケアとレジデントの教育の2つにあることに変わりはない.私のいたワシントン大学では,その2年前より,症例検討会ではレジデントの形態診断学を鍛えようということになり,レジデントは患者さんと挨拶はするものの病気に関する質問は禁じられ,観察所見のみから鑑別診断を挙げて議論することを要求される.初めの頃は,所見の言い方からつっこまれ,少し慣れると鑑別診断やその病気に関する知識も試される.レジデントが議論した後で,主治医が経過や生検結果についての種明かしをし,さらに皮膚科スタッフや開業医が自分の意見を議論する.写真ではなく実物の患者さんを出すため,症例数は日によって異なり,4,5例のことが多いが,まったくない日もあれば,10例あった日もある.それでも,診察時間は全部で30分,討論が45分と決まっているため,時間配分をしながら,どの症例が当たっても答えられるように短時間でまとめておかないといけない.患者さんはおのおの8~10畳ぐらいの個室に入っているので,頭と足と手(メモを取る)をフル回転させながら次々と診察していくことになる.レジデントが10人弱,医学生数人に,皮膚科スタッフが10数人と,総勢30人が各患者の部屋を出たり入ったりする.患者数が少ない時には全員が同じ部屋に入ろうとしてごった返し,前のグループが終わるまで部屋の外でしばらく待つことになる.また,難しい症例や珍しい症例では,皆が長居するので,その部屋だけ混雑する.
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