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一般病院に8年勤務したあと大学に戻る機会をいただき病棟医長となった.前病棟医長はなんと10年以上勤められたので久々の交代であり,荷の重さに加え,久しぶりにお目にかかる疾患が多々あり,冷や汗ものである.わが病棟は34床の大所帯,そういえば,他大学出身の私が入局前に初めて病棟を訪れたとき,「皮膚科病棟」の大きな掲示をみて,皮膚科の病棟?と驚いたものであった.
空きベッドの心配をする時期もあったが,このところはずっと満床ベッドのやりくりに苦労している.来週の入院予約の患者さんをどう入っていただくか,と頭を悩ませているところへ,急ぎ入院の依頼が続き頭を抱える(ふりをしているだけで張り切っている,ともいわれるが……).他病棟のベッドを借りることもできるのだが,看護師さんからは,症状の落ち着いている方に移っていただいて,緊急入院はこちらの病棟でとるように,との依頼もあり,移っていただく患者さんにお願いしなければならない.車椅子ではあるが,潰瘍の処置をしているだけの気のいいおじいさんにお願いする.快く受けてくれたが,しばらくすると看護師さんが「先生,大変,怒ってるよ!」,「歩いてる患者がいるのに,どうして俺がよそへ行かなくちゃならないんだ!」,「それは強い薬を使っている人とか点滴治療している人とかで……」,「俺は行かない!」.あまりの剣幕にご丁重にお詫びして他の人をお願いする.入院生活はやはりストレスもたまってしまうのだろうと感じる.別の方に快く移っていただいたと思っていたが,主治医から「なんだか寂しそうなんですけど,戻れないでしょうか?」.「皮膚科」の病棟が居心地よいのかと都合よく考えつつも,難しいと思うことはしばしばである.
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