Derm.2005
薬剤情報
中田 土起丈
1
1昭和大学医学部皮膚科学教室
pp.168
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412100174
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薬剤の種類は年々多様化,複雑化しており,そのすべてに精通することは不可能といわざるをえない.したがって,個々の薬剤に関する詳細な情報を得るためには,製造元・販売元である製薬会社の協力が不可欠である.ここでは私が薬剤情報について考えさせられた新旧2つのエピソードを紹介してみたい.
10年以上前の話になるが,当直の夜に悪性黒色腫の術後化学療法中の入院患者さんが腰痛を訴えた.みてみると,左側腹部から腰部に小水疱が出現しており,明らかに帯状疱疹の初期像であった.化学療法中の患者さんに抗ウイルス薬を投与した経験がなかったので,念のために投与中の3剤の情報をチェックしたところ,そのうちの1剤,しかも1クールにわたって連日投与する薬剤の欄に“慎重投与:水痘患者(致死的な全身障害が現れることがある)”という記載が目に入った.折り悪く,医局の花見か何かの日で他の医局員は出払っており,携帯電話など存在しなかった当時の状況では先輩医師に相談することも叶わなかった.藁にもすがる思いで販売元の製薬会社に電話をかけて事情を話したところ,夜にもかかわらず,水痘での副作用発症例の詳細や,帯状疱疹の患者では同様の副作用発現は認められていないことなど,貴重な情報提供を受けることができた.念のために投与中止が望ましいという結論に達し,患者さんには事情を話して,本来の入院目的である化学療法の中断を納得してもらった.幸い,帯状疱疹の経過中,特に副作用は認められなかった.
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