トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その2)
3.上咽頭癌stage IV症例
②癌研究会附属病院における上咽頭癌stage IVの治療法と成績
鎌田 信悦
1
1癌研究会附属病院頭頸科
pp.638-644
発行日 1998年9月20日
Published Date 1998/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902743
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はじめに
上咽頭癌は放射線感受性が比較的高く,これまでの標準的な治療法として放射線照射が第1選択として用いられてきた。しかし,stage IIIまでの原発巣と頸部リンパ節転移の制御率には満足し得る結果が得られるものの,T4およびN3の放射線制御率は決して満足できるものではなかった1,2)。また,遠隔転移率が高い上咽頭癌において局所療法である放射線治療は自ずと限界があった3)。これらの限界を打ち破るために,化学療法が様々な形で用いられ,それなりの成果を上げてきている。特にシスプラチンが頭頸部癌の治療に用いられて以来,化学療法の奏効率が向上し,併用療法の成果が出ている。化学療法を併用する方法には,放射線照射に先立って化学療法を行うinductionchemotherapy,放射線と同時期に投与するcon-current chemoradiotherapy,照射後に行うad-juvant chemotherapyがある。この中で,ad-juvant chemotherapyは上咽頭癌の遠隔転移抑制効果が証明されている4,5)。
上咽頭癌の新分類stage IVは放射線治療で難治性のものと考えて間違いはない(表1)。舌癌や下咽頭癌のリンパ節転移が放射線抵抗性であるのに対し,上咽頭癌の頸部リンパ節転移は放射線感受性が高く6cmを超えるN3が放射線照射で消失することは珍しくはない。とはいうものの,やはり難治性であることには違いはなく,化学療法や手術の併用で治療効果向上の努力がなされている。
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