総説
上咽頭癌
沢木 修二
1
1横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.95-107
発行日 1978年2月20日
Published Date 1978/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208614
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I.はじめに
上咽頭癌Nasopharyngeal carcinoma(NPCと略す)がヘルペス型に属するEpstein-Barr virus(EBVと略す)と関係が深く5)11),これが発癌の原因ではないかとの疑いがもたれてから10年近い歳月が経過した。その端緒はOld34)がBurkittリンパ腫の対照としてたまたま上咽頭癌症例の血清の抗体価を測定したところ,異常に高い価を示す例が多かつたことによる。Henleの考案した螢光抗体法8)22)によるこの抗体価の測定の普及と相俟つて,以来各国でこの問題が真剣に取り組まれ,つぎつぎに研究成果が報告されている。
わが国ではそれ以前から「未知人癌ウイルスに関する研究班」が組織されており,この課題を中心に多方面から研究が進められていた。途中から研究対象を「上咽頭癌の病因」にしぼり,川村明義教授(東大医科研免疫)を班長として協同研究が継続されている。研究班員の構成は疫学,民族学,人類学,臨床,病理,ウイルス,免疫といつた多彩な顔ぶれで,文字通り学際的interdisciplinaryな研究が行なわれている。
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