トピックス 頭頸部癌—私の治療方針と成績(その2)
3.上咽頭癌stage IV症例
①慶應義塾大学病院・静岡赤十字病院の場合
徳丸 裕
1
,
藤井 正人
1
,
行木 英生
2
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
pp.631-637
発行日 1998年9月20日
Published Date 1998/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902742
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はじめに
上咽頭癌は,その発生部位の解剖学的特徴から早期診断が困難であることが多く,また早期より頸部転移や遠隔転移をきたしやすいため,初診時にはすでに病期が進行していることが多いのが現状である。そのため,頭頸部領域の悪性腫瘍の中でも予後不良のものの1つとなっている。また,治療としては放射線に対する感受性が高いことから,従来より放射線治療が中心的な役割を果たしてきた。しかし,照射終了直後は腫瘍が消失しても,その後の局所および頸部リンパ節での再発や遠隔転移が多く,放射線による局所治療のみでは限界があると考えられる。当教室では,1982年から遠隔転移の予防,局所再発の防止を目的として化学療法を放射線療法に先行させて併用するneo-adjuvant chemotherapy (以下,NACと略)を積極的に行ってきた1,2)。
今回われわれは,当科にて加療した上咽頭癌一次症例のうち,stage IV症例について治療方針の変遷および治療成績を検討し,その結果をふまえ現在のわれわれの治療方針を示す。
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