特集 耳鼻咽喉科の機能検査マニュアル
9.発声機能検査
発声機能検査
田中 信三
1
,
日比 正史
1
,
平野 実
1
1久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.187-195
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900822
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はじめに
発声機能検査は,主として,音声障害の程度を評価したり,音声障害に対して行った治療の成績を評価するために用いられる。したがって,その検査方法は,普遍的であること,簡便であること,音声障害の程度や病態をよく反映していることなどの条件を満たさなければならない。しかしながら,発声はそれ自体が複雑な過程を経て生じるものであり,単一の指標でその機能のすべてを表すことは不可能である。つまり,喉頭筋の作用で声門が閉鎖した時に呼気力により声帯が振動して発声が生じるという一連の過程における様々のレベルで音声障害が引き起こされるので,発声過程の各レベルを評価する複数の機能検査が必要になるわけである。
このような発声過程のレベルによってこれまで報告された発声に関連する検査を整理すると,1)喉頭筋の活動性を評価するための喉頭筋電図検査1,2) 2)声門の閉鎖状態と呼気の使用状態を評価するための空気力学的検査3〜6) 3)声帯振動を評価するためのストロボスコピー検査7,8) 4)発声された音声を人の聴覚印象で評価する聴覚心理学的検査9,10) 5)発声された音声を音響学的に評価する音響分析検査11〜14),さらに 6)発声の限界値を評価する声域検査15,16)となる。これらのうち,1)の喉頭筋電図検査は反回神経麻痺などのごく限られた喉頭疾患に対して行われる検査であり,一般的には,2)から6)までの検査を行えば十分である。
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