特集 耳鼻咽喉科の機能検査マニュアル
8.嚥下機能検査
嚥下機能検査
前山 忠嗣
1
1佐賀医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.177-185
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900821
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はじめに
最近わが国も高齢化社会を迎え,脳血管障害や各種変性疾患に起因する嚥下障害が増加しつつあり,その取り扱いは重要な問題となってきている。また生存に必要な栄養は胃管や胃瘻造設によっても確保できるが,口から食べ物を摂取するという人間の根元的な欲求を満たすことは大切であり,生存の質を高めるという点からも嚥下障害の治療の重要性が増してきている。嚥下障害は病名ではなく症候名であり,その原因は多岐にわたり,また病態も様々である1).そのため治療は症例によって異なり,的確な治療を行うためには病態の詳細な把握が必要であり,各種の検査を行わねばならない。嚥下は第1期(口腔期),第2期(咽頭期),第3期(食道期)に分けられるが,本項では主として嚥下第2期の検査について述べる。
嚥下第2期は反射によって惹起され,多くの神経筋が関字し,いくつかの運動が連続して起こる極めて複雑で高度に統合化された運動である2, 3)。嚥下第2期には鼻咽腔は閉鎖されて鼻腔への逆流は防止され,喉頭は挙上閉鎖されて気道は防御され,咽頭内圧の上昇と輪状咽頭筋の弛緩による食道入口部の開大により食塊は咽頭より食道へと送り込まれる。これらの動きが十分に遂行されないと嚥下機能が障害される。
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