目でみる耳鼻咽喉科
振子様扁桃
横山 晴樹
1
1昭和伊南総合病院耳鼻咽喉科
pp.6-7
発行日 1992年1月20日
Published Date 1992/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900475
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振子様扁桃は1885年,Juraszが初めて報告して以来,本邦でも多数の報告があり,臨床診断上,一般的には表に示すような分類がなされているが,本邦での報告例のほとんどはいわゆる振子様扁桃であり,真性振子様扁桃の症例の報告はほとんどみあたらない。今回巨大な咽頭腫瘍を主訴とした真性振子様扁桃の症例を経験したので供覧する。
症例は6歳の男性で,溶連菌感染症のため某病院小児科に入院中に小児科医により巨大な咽頭腫瘍を発見され,当院を紹介され,1991年3月5日に当院を初診した。1歳頃よりいびきがひどく,最近はsleep apnea様の症状も出現しており,構音障害のため言葉がはっきりしない状態であった。初診時の咽頭所見を図1に示す。視診の所見と咽頭側位高圧撮影(図2),CT scan (図3)の結果から右の口蓋扁桃から発生した腫瘍として,右の扁桃腺ごと腫瘍を摘出する方針とした。同年3月20日に当院に入院し,3月22日全身麻酔下に手術を行った(図4)。摘出物を図5に示す。摘出物の病理組織所見では重層扁平上皮からなる粘膜下にリンパ濾胞が存在(図6)し,腫瘤の中心は不規則な線維化を示しており,組織学的には扁桃腺組織そのものであった。したがって本症例の咽頭腫瘍は振子様扁桃と結論されたが,CT scan(図3)や摘出物(図5)の所見をみても有茎性の部分は認められず,扁桃全体が振子様を呈した真性振子様扁桃と考えられた。症例の術後経過は良好で,いびき,構音障害は手術後ただちに消失し,3月29日に当院を退院した。
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