目でみる耳鼻咽喉科
シェーグレン症候群耳下腺病変の悪性リンパ腫への変化
今野 昭義
1
,
伊藤 永子
2
,
寺田 修久
2
1千葉大学医学部耳鼻咽喉科学教室
2秋田大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.100-101
発行日 1990年2月20日
Published Date 1990/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900016
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シェーグレン症候群(SjS)にみられる耳下腺腫脹はほとんど反復性腫脹であり,持続性腫脹がみられることは非常に稀である。しかしこの持続性腫脹は種々な治療に抵抗し,数年の経過の後に悪性リンパ腫に変化する可能性があり,治療上,大きな問題となる。
組織学的には高度の小円形細胞浸潤,高度の腺房変性・消失,筋上皮島形成を認める。抗生物質,副腎皮質ホルモン剤による効果は一時的であり,照射療法はかえって将来の悪性リンパ腫の発生を促す危険がある。耳下腺の持続性腫脹を伴う症例では浸潤細胞の間に埋没残存し,本来の唾液分泌機能を喪失した末梢導管上皮細胞そのものが,炎症性または自己免疫疾患としての唾液腺病変の増悪因子となっている可能性がある。SjS耳下腺病変に対する手術療法の適応は一般的にはないが,種々の治療に抵抗して増悪する耳下腺病変に対しては顔面神経を保存した耳下腺全摘術の適応も考えてみる必要があろう。
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