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舌咽神経痛において咽頭法によって切断する手技は全麻下の口蓋扁桃切除と同じアプローチで行う。位置は扁桃を摘出した痕の稲桃窩(または扁桃床)の下極に近い部分を直視したいため肩枕を入れ懸垂頭位に近い姿勢をとる。術者は手術台の頭位に位置し,口腔を上下逆にみる形となる。デービスの開口器で舌を十分に圧排する。これにより舌咽神経は緊張し,咽頭収縮筋の線維と容易に区別がつく。
扁桃の剥離は必ずしも被膜の保存に神経質にならなくてよい。摘出後扁桃窩の出血は結紮せずにピロゾンやボスミン液で止血する。舌咽神経は扁桃窩にもっとも浅い箇所で探すとよい。図1のように扁桃窩を前・後口蓋弓部と側壁に分けると,下極に近い側壁の後口蓋弓の境に近いところである6)。固く捲いた咽頭捲綿子で扁桃窩を中咽頭正中側に押し拡げるようにすると索状の1×2mmの強靱な神経が上下に走っているのがわかる。首の太い人,筋肉質の男性ではこのようにしても神経を見出せないことが多い。咽頭収縮筋が厚いからである。この時に図2のように図1の該当部位の筋を垂直に分ける。その奥に厚い頬咽筋膜がある。これに沿って左右に剥離子で探ると索状の神経を発見できる。舌咽神経は内・外頸動脈を縫うように走行し,この筋膜を上極の位置で貫通して咽頭収縮筋の中を走行して舌根へ侵入する。咽頭法では頬咽筋膜を裂く必要はないが,咽頭収縮筋を鈍的に裂き全長にわたって取り出せば3〜4cmの神経を切断することができる。舌咽神経が再生し,再び痛みを起こすのに0.5cmで半年と推測している。4cm切れば少くとも2年は痛みから開放されるし,再発をみとめない例もかなりある。私の経験では15例中再発5例で33%の再発率である7)。裂いた咽頭収縮筋は術後縫い合せる。後出血には細心の注意を払うとよい。術後は神経の断端の痛みだけで,普通の扁桃手術より痛みは遙かに少い。このため意味もないのに反対側の扁桃を切除することは避けた方がよい。
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