鏡下咡語
真珠腫手術の本音と建て前—先輩からのメッセージ
湯浅 涼
1
1東北労災病院耳鼻咽喉科
pp.870-871
発行日 1989年10月20日
Published Date 1989/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200428
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平成元年3月3日,当院において,はからずも3,000例目の中耳手術が行なわれた。17年前の昭和48年1月,私が東北大学から当院に赴任して以来,昭和53年6月に1,000例,59年8月に2,000例,と年間約200例のほぼ一定したペースで中耳症例手術が行なわれ,今回3,000例に達した。
内訳は慢性中耳炎が41.7%,真珠腫が31.4%,その他,例えば中耳奇形,耳硬化症,顔面神経管開放術などである。全体の73.0%は当院での初回手術例で,残りが再手術,二次手術等である。当院での再手術例が比較的少ない点は,出来ることなら手術は一回で済ませたい,という基本的な考えが貫かれてきたためと思われる。そのためには,まず真珠腫例に対して術後の再発を極力減らすことに努力した。昭和48年から2年間は外耳道保存もしくは削除/形成によるcloscd methodが主体であった。外耳道を一旦削除し,その後Kielboneなどを用いて削開外耳道を再形成した。この方法は従来の外耳道保存法に比べ再発の点で有利であると発表したが,その後術後の経過が長くなると移植Kielboneの異物反応,Kielboneの排泄などのトラブルが続出し,結局術後の成績の訂正を発表せざるを得なかった。
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