特集 ウイルス感染症
II.ウイルス感染症
Epstein-Barrウイルス(EBV)と上咽頭癌(NPC)
古川 仭
1
1金沢大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.859-866
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200235
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I.はじめに
二十世紀初頭,ウイルスへの関心は医学のいたる分野で高まりつつあった。"ウイルスと腫瘍"についても同様で,注目すべき報告がなされた。1911年Rousがニワトリ肉腫ウイルスを発見し,1933年Shopeが哺乳動物細胞最初のウサキ乳頭腫ウイルスを発見した。しかしヒトの癌の発生とウイルスを結びつけて考えるにはまだ時期尚早だったらしい。癌の発生にウイルスが関与しているとする仮説はその後も容易に証明されなかった。しかし1964年ヒトの悪性腫瘍最初のウイルスとして登場した令く新しいヘルペスタイプのウイルスEpstein-Barrウイルス(EBV)の発見は,分子生物学的技術の急速な進展も加わり,その後の華々しい腫瘍ウイルス研究を推進する契機となった。その結果ヒト癌ウイルスの研究は一段とすすみ,現在ではある種の癌にウイルスが深く関与することはもはや疑う余地がなくなった。EBVとその発見のきっかけとなったBurkittリンパ腫(BL)や上咽頭癌(NPC)の関係のほか,B型肝炎ウイルスと肝癌,ヒトパピローマウイルスと子宮頸部癌,HTLV−1と成人T細胞白血病などがその例である。今回はこれらの中で,NPC発癌に関与するEBVについて総説的に紹介する。
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