Japanese
English
シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎
11.嚥下
11.Swallowing
三枝 英人
1
Hideto Saigusa
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.959-964
発行日 2010年12月20日
Published Date 2010/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101722
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Ⅰ はじめに
嚥下障害は,あくまで原因となる何らかの疾患や病態があって,その結果か,もしくは二次的に発症するものであり,“嚥下障害病”というものがあるわけではない。したがって,ある一定の診断基準や治療指針に従って,治療を行うものでもない。嚥下障害による脱水・栄養障害に対しては経鼻経管栄養や経胃瘻栄養,中心静脈栄養が,誤嚥や肺炎に対しては気管内挿管や気管切開を行う,禁飲食の上,抗菌薬を投与するといった治療はあくまで嚥下障害に対する対応であって,嚥下障害に対する直接的な治療ではない。また,しばしば,嚥下障害を有する患者に対して,口腔内への寒冷刺激や“嚥下体操”と称される舌や顔面表情筋の運動,カプサイシン含有のガムなどを用いた訓練(?)などが,ただ闇雲に行われ,結局のところ何の改善もみられないで,貴重な数か月を無駄に過ごすということも現実的には多くある。このような場合でも,『摂食機能療法(185点)』として保険点数が加算されているとなれば,大きな問題であるといわざるを得ない。
嚥下障害に対する治療を行う場合,最も重要なことは,水分・栄養摂取の問題,下気道に対する対処について考えることは当然であるが,なぜ,『この患者』に嚥下障害が起こっているのか,何が嚥下障害を起こす原因であり,嚥下障害が改善しない,もしくは遷延する要因であるのか,何が不利な条件を演出しているのかについて,実際の患者を診察し,考察を進めることである。まず,嚥下内視鏡検査や嚥下透視検査でも,嚥下訓練でもないことに留意する必要がある。
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