特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に
各論
2.音声言語ならびに嚥下 2)嚥下障害
三枝 英人
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.115-121
発行日 2007年4月30日
Published Date 2007/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101089
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Ⅰ はじめに
リハビリテーションの語源としての『再び人間らしい生活をすることができる』という観点からみれば,“嚥下障害に対するリハビリテーション”とは,必ずしも嚥下障害を根治するということのみを目標とするものではないことがわかる1)。近年は,内視鏡的胃瘻造設術や埋込み型中心静脈栄養法などの代替栄養法の進歩により,嚥下障害に対する対応が進み,嚥下障害に伴う栄養不良や脱水により,重篤な状態に至ることは少なくなってきていると思われる。一方で,嚥下が水分・栄養摂取という生命の根源的要求に従う機能であるためであろう,ほかの障害に比較して,その改善への要求は根深いものがある。重度の嚥下障害のために長期にわたって代替栄養を余儀なくされている患者であっても,『もし,たった一口の水でも』と,経口摂取への望みを強く心に抱いている場合は多い。しかし,嚥下障害に対する機能訓練をはじめとしたリハビリテーションの手法には,現在まで,種々のものが報告されているものの,その多くは経験的に行われている側面が強く,いまだに科学的根拠に基づいた検証がなされていないというのが現状であるように思う。
本稿では,病態に応じた適切な嚥下機能訓練・指導を行うことの重要性を実際の症例から学びたいと思う。
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