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Ⅰ はじめに
耳鼻咽喉科・頭頸部領域における囊胞性疾患には,リンパ管腫,がま腫,正中頸囊胞,側頸囊胞などさまざまな病態が挙げられる。根治的には手術的摘出が推奨されてきたが,囊胞の性状によっては完全摘出が困難である症例が存在する。
硬化療法は,治療後の囊胞が硬結として触知されることから名付けられ1),当初,小児囊胞状リンパ管腫の治療に用いられた。囊胞状リンパ管腫は,幼小児の側頸部に好発し,その多くは無症状に経過するが,時に巨大な腫瘤となり,呼吸困難,嚥下困難,顔貌変形を呈し,治療が必要となる。手術的摘出は,腫瘤が限局性で周辺組織に浸潤のない場合,全摘可能である。しかし,腫瘤の壁が薄く,周辺の神経,血管などから剝離することは必ずしも容易ではなく,顔面神経,舌下神経,反回神経などの神経障害,創感染,リンパ液漏出などの合併症の可能性がある。また,顔面,頸部に好発することから,創傷による美容上の問題も無視できない。こうした欠点を克服する目的で,硬化療法が開発された。
1976年,由良ら2)が,bleomycinによる小児囊胞状リンパ管腫の硬化療法を初めて試みた。しかし,bleomycinは薬剤の性質上,肺線維症などの重篤な副作用の可能性があり3),幼小児に使用することに抵抗があることは否めない。そこで,荻田により,リンパ管腫が感染をきっかけに自然治癒し,OK-432(商品名Picibanil®)の皮内投与が局所に炎症を惹起するが損傷を残さないことに着目し,リンパ管腫の治療にOK-432を用いたと報告されている4)。Picibanil®の名称は開発略号がPC-B-45だったことから,ピ(P)シ(C)バ(B)ニールと命名され,OK-432は,治験番号がそのまま略号として使用されている。
その後,リンパ管腫に対するOK-432を用いた硬化療法が有用であることが明らかになり,さまざまな囊胞性疾患に応用されるようになった4~9)。
本稿ではOK-432局所注入による囊胞性疾患の硬化療法をオフィスサージャリー・ショートステイサージャリーで行う場合の実際と有効性,さらに問題点について触れていきたい。
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