鏡下咡語
高齢社会の聴覚・コミュニケーション障害対応―日本の耳鼻咽喉科医は対応するのか?
野田 寛
1
1特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
pp.722-723
発行日 2003年9月20日
Published Date 2003/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100913
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I.はじめに
高齢社会が進行し,高齢難聴者が増えてきている。七十歳を超すと約半数の人が補聴器を必要とするほどに聴力が衰えてきており,当地宜野湾市の実態調査においても実証されている。
しかし,補聴器の評判は頗る悪く,補聴器を必要とする人の20人に1人しか使われていないことも,同実態調査で実証されている。
年齢が進み,聴えが衰えてきて,補聴器を使用しないでいると,まず社会参加が不能となり,家庭内でも孤立していき,人生を享受できない,人生を全うできなくなり,ひいては“寝たきり”“ボケ”に繋がっていく。このことは,まず当人にとって実に気の毒なことであると同時に,社会的にも大きな損失である。聴こえさえしていれば,その人がなし得たであろう社会貢献が失われてしまうからである。そのうえに“介護”の問題が家族,社会にのしかかってくることに,日本の社会は未だ気づいていない(当地でも報道されたように,「ボケ・寝たきり」高齢者の虐待問題にまで発展することもあるようで,実に悲しいことである)。
介護保険がスタートして,保険料が全国一高い沖縄県の初年度の赤字が三十億円,これを国と県と市町村で埋めることとなったが,このことから本年度は保険料が平均1.5倍に値上げされることとなった。保険料を払わない,払えない人の増加と相俟って年々保険料は増額されよう。したがって,高齢者に生きがいをもたせ,ボケさせないようにする工夫が全国各地で検討されているが,人間社会に生きていくことの基本的な条件の中で最も重要な,聴こえの問題,コミュニケーション障害の重要性については,聴こえの問題を担当すべき耳鼻咽喉科医ですら感知していないのが現状である。
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