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I.はじめに
頭頸部癌は約90%が扁平上皮癌である。口腔・咽頭の扁平上皮癌は,どの臓器でも進行してから受診することが多く,予後は悪い。また,たとえ摘出不可能なほどに進行した癌ではなく,根治手術の可能な腫瘍であっても,合併症のために根治手術が施行できない例もある。このような例でも,十分な治療が行えないため予後は同様に悪い1)。
手術不能例(広義のinoperable症例)には腫瘍が極度に進展した例(unresectable症例)と他の要因によって手術が不可能な例(狭義のinoperable症例)がある。根治手術が不可能なほど進展した例としては,主に転移頸部リンパ節腫瘍が総・内頸動脈に浸潤し,動脈閉塞試験(balloon Matas test)陽性例,周囲臓器に広範に,また椎前筋や後頸筋に深く浸潤した例,さらに多発性の遠隔転移例などがある。一方,80歳以上の高齢者であれば治療後のQOLを考慮し,広範な臓器摘出手術を避ける場合もある。さらに,摘出手術は可能であっても,重篤な,あるいは治療によって悪化する恐れのある脳血管障害,心疾患,肝疾患などの合併症を有する症例,活動性の重複癌をもつ症例,さらに手術拒否例などが狭義のinoperable症例である。
本稿では,unresectableな症例と狭義のinoperableの症例に対する一次治療時に分けて解説する。一次治療として手術不能例では,原発部位,転移頸部リンパ節に対しては根治量(60~70 Gy)の放射線治療が行われることが多く,放射線治療と化学療法との併用療法を主に述べる。
手術が不可能な再発癌の治療も,今回述べる化学療法と同じレジメンが用いられる。一次治療で既に化学療法が用いられた場合は,一次治療時のそのレジメンに対する反応性が悪ければ,一次治療で用いた化学療法とは異なるレジメンを用いることが多い。
一次治療での化学療法の用い方としては,一次治療後に用いる維持化学療法を除くと,全ての治療に先行するneoadjuvant chemotherapy(NAC)か,放射線治療との同時併用療法(concurrent)となる。
1970年代後半から様々なレジメンのNACが頭頸部扁平上皮癌に用いられてきた。その結果,cisplatin(CDDP)と5-fluorouracil(5-FU)を含むレジメンが最も奏効性が高いと考えられている(図1)2)。また,化学療法単独でcomplete response(CR)率の高い化学療法のレジメンが望ましい。
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