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Ⅰ.はじめに
頭頸部の特徴は鼻・副鼻腔,口腔,咽頭,喉頭など多臓器を含む領域であり,感覚器であるとともに呼吸と嚥下機能をつかさどる。多臓器であることは化学療法の臨床研究ではさまざまな問題点を有する。一臓器のみを対象にすると,化学療法の有用性をみる臨床試験ではきわめて多くの施設で行わない限り,症例集積に長期間を要する。根治治療である手術内容も当然臓器によって異なる。また臓器によって頸部リンパ節転移の頻度,さらにはその進行度(N分類),頸部リンパ節転移部位にも相違がある。一般的には頭頸部癌の化学療法に対して原発腫瘍(T)のほうが,頸部リンパ節転移(N)より感受性が高い。そのため臨床研究で同じstage ⅣでもN3の症例(ⅣB)の頻度によって化学療法の奏効率が異なり,生存率も異なる(図1)1)。
頭頸部癌は病理組織学的に約90%を扁平上皮癌が占め,臓器によって分化度が異なるのも特徴である。未分化癌や低分化扁平上皮癌が多い上咽頭癌は,その解剖学的部位から根治治療は放射線治療である。最近の化学療法の効果を検討する研究では,その特異的な病理組織型,治療形態から上咽頭癌を除くことが多い。すなわち上咽頭癌のみを対象にした臨床研究が多い。上咽頭癌を除いた頭頸部扁平上皮癌でも本特集の他稿で記載される化学療法と放射線治療との同時併用療法(concurrentまたはconcomitant chemoradiotherapy:CCRT)を含めて,扁平上皮癌の分化度によって化学療法や放射線治療に対する感受性が異なり,その結果予後に影響するとの報告もある2)。
本稿では頭頸部扁平上皮癌(以後,頭頸部癌と略す)に対する化学療法のうちneoadjuvant(induction)chemotherapy(NACまたはIC)を中心に現状を述べる。
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