鏡下咡語
Norman CousinsとLinus Pauling
森田 守
1
1自治医科大学名誉教
pp.126-128
発行日 2005年2月20日
Published Date 2005/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100076
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長寿県といわれていた沖縄県の平均寿命が,2000年の統計では26位に「転落」した。これは男性の場合であるが,女性でも,この伸び率が下から数えて2番目となっているので,次回(2005年)の統計では首位を明け渡す可能性がある。食の欧米化,肥満・糖尿病の増加,高い飲酒・喫煙率,運動をしない,検診の受診率も低いなどの問題が指摘されている。逆に徐々に順位を上げ,1990年以降男性で1位を保っているのが長野県で,食生活の改善,疾病予防に住民・医療機関が一体となって取り組んできた努力の成果としている。
世界一の長寿国である日本も,沖縄県と同じような運命を辿るのではないか。現在平均寿命に達している人たちは1926~1927(昭和1~2)年〔女性は1919~1920(大正8~9)年〕に生まれ,昭和の激動期を生き抜いてきた「つわもの」である。今後,平均寿命の動向を左右する70歳前後の年輩者は,育ち盛りを戦中・戦後の食糧難の最中に過ごしており,働き盛りの現役世代は,戦後の20~30年間に急激に欧米化した食生活により,動物性脂肪の摂り過ぎの中で生まれ育ち,車社会で運動不足になり,その上にアルコールの飲み過ぎも加わって,糖尿病など生活習慣病が急増している。次世代を担う小児では,肥満傾向の男児が最近30年で3倍に増加しているのも見過ごせない。基礎体力・運動能力の低下も指摘されている。女性では肥満傾向は男性ほどではないが,若い女性層で飲酒・喫煙率が増加しているのも問題である。
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