鏡下咡語
食料・エネルギー危機
森田 守
1
1自治医科大学
pp.487-489
発行日 2008年6月20日
Published Date 2008/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101287
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わが国の食料自給率が熱量ベースで39%,穀物重量ベースで27%に低下したことで話題になっているが,熱量自給率は10年前既に40%に低下しており,50%を切ったのが20年前なので,今更の感がなくもない。また発表されている数値に異論もある。熱量自給率の計算方法は,[(国民1人1日当たりの国産熱量996kcal)÷(国民1人1日当たりに供給されている熱量2,548kcal)]×100=39.1%から算出されているが,飽食状態で高率に残したり廃棄したりしている食糧も分母に入っているので,必要とされるカロリー数のみで算出すべきだというわけである。さらに現在国内で生産されている食料には,耕作機械,化学肥料,農薬,ハウス栽培など,多くの機材・資材が使われており,ほとんどといってよいほど石油製品を必要としていることも考慮すべきである。原子力を除いたエネルギー自給率が4%になってしまったわが国にとって,原油価格の暴騰は食料以上に深刻な問題かも知れない。これらの点を考慮すると,熱量ベースで20%,穀物重量で14%前後になってしまうという。
自給率が低下する一方の日本と,一時は日本より低かった自給率を着々と改善し,現在では100%を超えている欧州諸国との差は際だっている。国内からだけでなく,国外からも将来が危ぶまれている状態はただ事ではない。社会から厄介者扱いされている後期高齢者の仲間入り目前のものには,長くてもあと10年の寿命なので,余計なお世話かもしれないが,それでも10年,20年後のわが国の食料・エネルギー事情はおおいに気にかかる。
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