連載 医者も知りたい【医者のはなし】・25
化学と物理学と医学を結合させた男 Linus C. Pauling(1901-1994)
木村 專太郎
1,2
Sentaro Kimura
1,2
1木村専太郎クリニック
2日本医史学会
pp.786-788
発行日 2007年8月25日
Published Date 2007/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101109
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まえがき
今回は,20世紀の最も重要な化学者として尊敬され,医学にも非常に関係の深いライナス・C・ポーリング(Linus Carl Pauling)について述べる.彼は,風邪に罹患したときにビタミンCを大量に摂取することを推奨したことでノーベル賞を授与されたと巷で噂されているほどなので,記憶されている方も多いのではなかろうか?彼は大学で化学を専攻し,同時に物理学と数学も学び,のちに物理の量子力学を用いて化学結合を解明した画期的な論文を1931年にまとめ,化学と物理学の結合を意味した物理化学の概念を発表した.1939年に著書「化学結合論:分子と結晶の構造」を出版したあと,タン白質の研究,人工血漿の作成,鎌状赤血球の分子レベルでの原因究明など医学分野の研究活動を行った.このように量子力学を化学に応用する新しい方法,すなわち分子生物学に関する多くの情報を得ることを可能にした化学結合の本性を明らかにした業績により,1954年にノーベル化学賞を受賞した.その後,核実験に反対する科学者1万人以上の署名を国連に提出して,『ノーモア・ウォー』を出版し,核実験の部分停止の実施に貢献したことから,1962年のノーベル平和賞を受賞した.
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